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2018/10/12

10月全校集会・講話

Tweet ThisSend to Facebook | by 校長

 シンギュラリティという言葉を聞いたことがあるでしょうか。技術的特異点という意味ですが、これでは何のことかわかりませんね。現在、この言葉は情報処理の分野でよく使われます。簡単に言ってしまえば、「人工知能、つまりAIが、人間の知能を超える時点」ということです。遠くない未来、2045年には、シンギュラリティに達すると予測する科学者もいます。

 しかし、シンギュラリティはあり得ない、と言う方がいます。国立情報学研究所の新井紀子教授です。「コンピュータができるのは、四則演算と、統計処理と、情報検索。基本的にこれしかやっていないのだから、人間の知能を超えることはない。そもそも、人工知能、AIなど、今現在、存在していない。AIを目指してつくられた技術、AI技術があるだけだ」と、新井先生は言います。

 実は、今、AIとよばれているものには、言葉の意味の理解ができません。つまり、考えることができない。それでは、とても知能と呼ぶことはできないでしょう。そして、コンピュータが計算と統計と検索だけやっている限り、たとえどれだけ大量のデータを処理したとしても、「知能」にはなり得ないのです。

 どうですか、少し安心しましたか。しかし、安心できない現実もあるのです。

 知能とは呼べないAI技術、それがこれから、人間の仕事を奪っていきます。なぜなら、「考えなくてもできる仕事」、つまり計算と統計と検索で対応できる仕事が、世の中にたくさんあるからです。そして、その面においては、コンピュータは圧倒的に強い。

 銀行の窓口業務は、もうずいぶん前からATMというコンピュータに置き換えられてきましたが、現在では、融資の審査がコンピュータ化されはじめました。ネットバンクではすでに導入され、大手金融機関でも来年の春に導入、という記事が5月の新聞に出ていました。銀行の融資担当といったら、銀行の主役です。それがAI技術にとってかわられる日が近づいています。また、今日の新聞では、ビッグデータの企業間でのやりとりが開始される、という記事も出ていました。何が、どういう人に、いつ売れたのか、そういう情報をコンピュータで分析し、企画、生産、販売を管理していく。ここでも企業経営の中核を担っていた人の仕事がコンピュータに置き換えられていきます。

 こうした例に見るとおり、本当に多くの分野で、人々の仕事がコンピュータに取って代わられる。そしてその仕事は、ホワイトカラーが担ってきたものがとても多いのです。みなさんのライバルは、知能を持ったコンピュータではなく、すさまじい計算・統計・検索の力を持ったAI技術です。

 どうしたらいいのか。答えは、AI技術にできない力を身につけること。さきほどお話ししたとおり、AIは考えることができません。おそらく、将来にわたってできない。ならば、考える力を身につけることで、次世代を生き抜くことができる。

 では、考える力とはなにか。先の新井先生は、その一例として、「推論」「イメージ」「具体・抽象」を挙げています。「推論」とは、常識や自分の経験、その他さまざまな知識を動員して物事を理解していくこと。「イメージ」とは、言葉からイメージを導き出す、あるいはイメージから言葉を導き出すこと、そして「具体・抽象」とは、具体的なものを概念にまとめる、あるいは概念から具体的なものを生み出すこと、です。こうした思考を積み重ねていくことで、私たちは考える力を鍛えることができる。

 しかし、ここで冷静に振り返ってみてください。みなさんが、積極的に授業を受けているとき、「推論」「イメージ」「具体・抽象」という働きをフル稼働させているのではないですか。あくまで、主体的に、積極的に、授業に参加しているときですが。あるいは、人文科のみなさんが取り組んでいる「探求」は、こうした活動そのものではないですか。

 そう、簡単に言ってしまえば「常に考える」、その習慣を身につけること、それこそが次世代を生き抜く力を育むのであり、そしてそれは、今、ここで、鍛えることができるのです。また、今日から、しっかり考え、主体的・積極的に行動していってください。


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